案件の紹介が減った。次の配属が決まるまでの待機が長くなった。そんなときに「AIがコードを書くようになっても、人間のエンジニアは必要」と言われても、自分の仕事が続くのかという不安は残ります。
AIによって実装やテストに必要な総工数が減れば、案件そのものが残っていても、発注される人月や参画枠は縮む可能性があります。 最終確認を人が行うとしても、その確認を担う人が仕様・設計・品質まで理解し、AIを使って複数工程を担当できるなら、従来と同じ分担・人数が必要とは限りません。
備えるべきなのは、エンジニアという職業が完全になくなる日だけではありません。自分が任される仕事が狭まり、次の案件を選びにくくなる変化にも目を向ける必要があります。判断材料になるのは、案件市場のデータと、自分の担当工程、所属先で今後積める経験です。
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AIでSES案件はなくなる?2026年の調査では領域ごとに違いがある
2026年5〜6月の調査では、案件の減少を感じるSES営業担当者の回答が多く集まりました。ただし、すべての領域が同じ方向に動いているわけではありません。「減っている」という回答が多い業務と、「増えている」という回答が多い業務を分けて見ると、自分の経歴との関係を考えやすくなります。
SES営業担当者の81.3%が案件総数の減少を実感
INSTANTROOM株式会社が運営するSES Laboは、2026年5月20日〜6月1日に、SES企業の営業担当者112人を対象とするインターネット調査を行いました。案件総数について、回答者の81.3%が減少を実感しています。
運用保守・テスト・監視と、PM・要件定義では回答が分かれる
同じ調査でも、担当領域によって増減の実感は異なります。
| 調査上の業務区分 | 回答の傾向 |
|---|---|
| 案件市場全体 | 81.3%が減少を実感 |
| 運用保守・テスター・監視 | 75.9%が減少を実感 |
| 設計・開発 | 63.4%が減少を実感 |
| PM・コンサル・要件定義 | 62.5%が増加を実感 |
この調査は、日本全国の案件を数えた統計ではありません。また、業務区分ごとの回答から、個々のエンジニアの能力や失業確率を判定することもできません。
出典:SESLabo『SES業界の案件動向調査〖2026年〗』(2026年6月16日公開)(2026年9月28日確認)
AI・DX関連のフリーランス案件は、別のデータで増加している
レバテックの自社サービスのデータでは、2026年6月のAI・DX関連ITフリーランス案件数は、前年同月の約3.1倍でした。これは同社で扱う案件の動きであり、国内SES市場全体の数字でも、正社員の雇用者数でもありません。
増えている分野があっても、その仕事を現在の経験で担当できるかは別です。新しい案件に必要な技術や業務知識と、自分が説明できる経験を照らし合わせて確認しましょう。
出典:レバテック『AI・DX関連のITフリーランス案件数は昨年比約3.1倍、出社回帰で働き方の二極化が進む』(2026年7月27日公開)(2026年9月28日確認)

「AIによってSES案件が81.3%減った」という意味ではない
このデータから確認できるのは、調査に回答した営業担当者が、担当領域によって異なる市場感を持っていたことです。そのうえで、AIが開発工程へ入った場合に、自分の仕事量や担当範囲へどのような影響があり得るかを考える必要があります。
案件数が同じでも、AIで必要な人月・参画人数が減る可能性がある
「案件があるなら仕事はなくならない」とは言い切れません。発注企業が必要とするのはシステムやその運用であり、従来と同じ人数で作業すること自体ではないからです。
同じ成果を少ない総工数で出せれば、外部へ頼む仕事量も変わる
開発の仕事量を考えるときには、人月という単位が使われます。1人が1か月働くことに相当する仕事量を1人月とする考え方です。10人月は必ずしも「10人を採用する」という意味ではなく、人数と期間を組み合わせた工数です。
例えば、従来は10人月かかっていた開発を、AIを使って6人月で完成させられるようになったと仮定します。同じ期間に4件を受注するなら、全体の必要工数は40人月から24人月へ変わります。
| 説明用の条件 | 1案件の総工数 | 案件数 | 合計工数 |
|---|---|---|---|
| AI導入前 | 10人月 | 4件 | 40人月 |
| AI導入後・案件数は同じ | 6人月 | 4件 | 24人月 |
| AI導入後・受注が増加 | 6人月 | 7件 | 42人月 |
2行目では案件数は減っていません。それでも、同じ成果を出すために必要な仕事量は減っています。実際の契約や体制によっては、参画枠の削減、契約期間の短縮、増員の見送りといった形で影響が表れるシナリオが考えられます。
現在の契約人数や期間が自動的に変わるという意味ではありません。ここで考えているのは、次の発注や増員、契約更新の判断で、必要な体制が見直される可能性です。

新しい開発需要が増えれば、工数削減を相殺することもある
表の3行目では、1案件あたりの工数が減っても、受注が7件へ増えたため、合計は42人月になります。効率化で取り組める開発が増えれば、全体の仕事量が維持・拡大する場合もあるという例です。
ただし、会社全体の受注が増えたことと、自分に任せられる仕事が増えたことは同じではありません。新しい案件に別の経験が必要なら、従来の実装やテスト実行だけを担当していた人へ、そのまま仕事が配分されるとは限りません。
コードを書く時間だけでなく、完成までの工数を見る
AIが速くコードを出しても、仕様確認や修正に時間がかかれば、開発全体では短縮にならない場合があります。測るべきなのは出力の速さではなく、検証を終えて使える状態になるまでの時間です。
開発者の生産性を調べるMETRは、2026年2月に研究の設計を見直すと発表しました。実験への参加者や対象作業の選ばれ方が変わり、AIによる速度向上の大きさを正確に推定しにくくなったと報告しています。先ほどの10人月から6人月という例は、現在のAIに一律の短縮率を当てはめたものではありません。
出典:METR『We are Changing our Developer Productivity Experiment Design』(2026年2月24日公開)(2026年9月28日確認)
人間のコードレビューが必要でも、現在のエンジニア人数が維持されるとは限らない
「AIは間違えるので、最後は人が確認する」。この説明は、誰が、どの範囲を、何人で確認するのかまで考えなければ、雇用の見通しにはつながりません。
95.5%という回答は、レビューが必要と答えた464人への追加設問
レバテックは2026年5月26〜28日、20〜59歳のITエンジニア572人にインターネット調査を行いました。そのうち、人間によるレビューが必要と回答した464人へ、今後も必要だと思うかを尋ねています。
この追加設問で、継続的に必要だと考える回答49.4%と、当面は必要だと考える回答46.1%を合わせた割合が95.5%です。調査全体の572人を分母とした数字ではありません。
また、これは回答者の認識を聞いた調査です。人間のレビューが永久に必要という技術的な証明でも、エンジニアの人数が維持されることを測った調査でもありません。
出典:レバテック『AIによるコーディングの効率化が進む一方、95.5%が「今後も人間のコードレビューは必要」と回答』(2026年7月15日公開)(2026年9月28日確認)
確認を担当するのは、実装だけを担当していた人全員とは限らない
例えば、ある業務システムでAIがコード案とテスト案を作るとします。確認担当には、コードが動くかだけでなく、利用者の権限、既存データとの関係、処理が失敗したときの影響を判断する仕事が残ります。
その仕事を担うのは、単にコードを入力できる人ではなく、システムと業務の両方を理解し、仕様・設計・検証をつなげられる人になる可能性があります。その人がAIを使って複数工程を担当できれば、実装、テスト実行、確認を別々の人へ切り出す範囲は変わり得ます。

スキルの高さは、年数や役職ではなく判断できる範囲で考える
ここでいう「スキルの高い人」は、年齢が高い人やPMという肩書の人に限定しません。テスト担当でも、仕様の矛盾を見つけ、必要な検証を設計し、不具合の原因を説明できる人は、実行作業だけとは異なる役割を担っています。
逆に、役職が付いていても、担当範囲が定型的な進捗転記だけなら、その肩書を安心材料にすることはできません。自分が何を判断し、その判断をどの結果で確かめているかまで説明できることが重要です。
AIで影響を受けやすいのは「工程名」ではなく、切り出しやすい定型作業
実装やテストという工程名だけで、自動化のされやすさを判断するのは粗すぎます。同じ実装でも、完成した仕様をコードへ落とす仕事と、仕様の曖昧さを解消しながら作る仕事では、確認する内容が違います。
GitHubの公式資料によると、Copilotのエージェント機能は、コードの変更、テストの実行、レビューの指摘案作成などに対応しています。一方、誤った提案や問題の見落としがあるため、出力のレビューとテストが必要だとも説明されています。AIが支援する範囲は、コードの入力だけに限られていません。
出典:GitHub Docs『Application card: GitHub Copilot Agents』(2026年9月28日確認)
| 作業 | AIに任せる候補 | 確認・判断すること |
|---|---|---|
| 実装 | コード案の生成 | 仕様・設計との整合 |
| バグ修正 | 修正候補の生成 | 原因・副作用・再発防止 |
| テスト | ケース・コード案の生成 | 検証範囲・結果の妥当性 |
| 運用 | ログの要約・定型調査 | 障害の影響・対応の優先度 |
| レビュー | 問題点の候補抽出 | 指摘の採否・全体の品質 |
仕様どおりの実装でも、何を満たすかを説明できるか
例えば、一覧画面へ検索条件を追加する仕事を考えてみてください。該当データがない場合の表示や利用者ごとの閲覧権限など、確認すべき条件もあります。既存の検索条件との組み合わせまで検証していれば、担当しているのはコードの入力だけではありません。
反対に、指示されたコードを入れ、動いたことだけを報告しているなら、自分が担当する範囲は狭いままです。AIが作る部分が増えたときに何を任せられるか、今の仕事から説明できるようにしておきましょう。
単純に見えるバグ修正こそ、原因と副作用を区別する
エラーが出なくなる修正と、原因を解消する修正は必ずしも同じではありません。例外を握りつぶせば表示上のエラーは消えても、必要な処理が行われないままになる場合があります。
AIの修正候補を採用するときは、元の不具合を再現できたか、変更後に解消したか、別の動作を壊していないかまで確認してください。その経過を説明できることが、単に修正案を貼り付ける仕事との違いになります。
テストコードの作成と、何を検証するかを決める仕事は別
AIがテスト案を作っても、元の仕様が間違っていれば、間違った仕様どおりに動くことを確認してしまいます。実装された内容だけを基準にテストを作るのではなく、要求された動作や失敗時の扱いから検証項目を考える必要があります。
テスト実行を担当している人なら、不具合を報告する際に、再現条件と期待した動作まで整理するところから始められます。新しい担当範囲や権限が必要な変更は、上司・責任者と合意して進めてください。
手順どおりの監視と、障害時の判断は同じではない
通知を確認して決められた宛先へ連絡する仕事と、複数の通知から利用者への影響を調べ、対応順を決める仕事では、必要な情報が異なります。運用の経験を書くときも、「監視を担当」だけでなく、どこまで調べ、誰へ何を伝えたかを分けましょう。
性能検証や運用設計などを担う人まで、テスター・運用保守という名前で一律に「単純作業」とすることはできません。AIの影響を考える単位は肩書ではなく、実際の仕事です。
SES案件の減少はAIだけが原因とは限らない
紹介される案件が減っているとき、原因をすべてAIに求めると、対処もずれます。顧客の外注方針が変わったのか、予算が止まったのか、自分の条件に合う案件が減ったのかを分けて確認しましょう。
企業の内製化で、外部へ任せる範囲が変わる場合がある
レバテックが2025年12月5〜8日に企業のDX推進担当者553人を対象に行った調査では、外部委託していた業務を内製化する取り組みが報告されています。一方、内製化の過程で外部委託やフリーランスを組み合わせる回答もありました。
内製化と、外部人材が一切不要になることは同義ではありません。自分の案件では、実装を社内へ戻すのか、設計や運用の支援を外部へ求めるのかなど、発注範囲の変化を確認することが重要です。
出典:レバテック『6割超の企業が外部委託から内製化へシフト、「脱ベンダー依存」の動きも顕著に』(2026年1月15日公開)(2026年9月28日確認)
予算・募集要件・働き方の条件を切り分ける
「案件が少ない」という説明だけでは、何を変えると選択肢が増えるのか分かりません。以下は市場全体の原因を断定する表ではなく、営業担当者と確認するときの整理例です。
| 確認する要因 | 営業へ聞くこと |
|---|---|
| 顧客の予算変更 | 中止か延期か、再開予定はあるか |
| 内製化・発注範囲の変更 | 社内へ戻った工程はどこか |
| 必須経験との不一致 | 足りない経験は何か |
| 出社・勤務地の条件 | 技術以外の条件が障壁か |
| AI導入による体制変更 | 募集人数・期間・担当工程が変わったか |
技術要件は合っていて出社条件だけが合わないなら、追加学習だけでは解決しません。逆に、設計経験が必須になった案件であれば、勤務条件を譲っても不足は埋まりません。何を変えるべきかは、見送りや募集変更の具体的な理由を聞いてから判断する必要があります。
AIによる生産性向上と、需要の変化を同じ原因にしない
同じ開発を少ない工数で行うことと、開発そのものを中止することは別です。また、募集は続いていても、求める担当範囲が変わる場合があります。
社内の説明でAIが理由に挙がったときは、「どの作業をAIへ移したのか」「どの募集枠を変えたのか」まで確認しましょう。単にAIが普及しているという説明より、自分の次の配属や学習に直結する情報になります。
自分が「AIで参画枠を失いやすい状態」か仕事内容を棚卸しする
ここでは、失業する確率を点数化するのではなく、AIに任せる作業が増えた場合に、自分が引き続き担当できることを書き出します。「経験3年」のような年数だけでは見えない、仕事の中身を整理するためです。
担当工程と、その中で自分が判断したことを分ける
次の表を自分のメモに写し、最近の案件を一つ思い出して記入してください。経験がない項目は空欄で構いません。空欄をなくすことではなく、現時点で説明できる経験と、次に増やしたい経験を分けることが目的です。
| 工程・経験 | 書き出す内容の例 | 自分の経験 |
|---|---|---|
| 要件・仕様確認 | 不明点を誰に確認したか | 記入欄 |
| 設計 | 方式を選んだ理由 | 記入欄 |
| 実装 | 実装した機能と制約 | 記入欄 |
| コードレビュー | 確認項目と採否の理由 | 記入欄 |
| テスト設計 | 検証項目を選んだ根拠 | 記入欄 |
| 不具合原因調査 | 再現条件と原因の特定 | 記入欄 |
| 障害対応 | 影響確認と対応の範囲 | 記入欄 |
| 顧客・他チーム調整 | 解消した認識の違い | 記入欄 |
| AIを使った実務 | 許可された用途と担当範囲 | 記入欄 |
| AI出力の検証 | 誤りの発見・修正・再確認 | 記入欄 |
AIを使った場合も、採用した理由と確認結果を説明できるか
AIを使わずに作業すること自体を、能力の基準にする必要はありません。確認したいのは、AIの提案をそのまま受け入れたのか、自分で根拠を確認して採用したのかという違いです。
「AIがそう言ったから」ではなく、「この仕様に合うため採用した」「既存の認証処理を壊すため却下した」「この条件でテストして結果を確かめた」と説明できるかを見てください。説明できないところがあれば、使用ツールを増やす前に、その部分を調べ直すほうが実務上の不足を埋められます。
実装以外の経験がないなら、次に一つ増やす工程を決める
最初から要件定義、設計、障害対応のすべてを経験する必要はありません。テスト実行が中心なら一機能のテスト設計、実装が中心なら仕様確認や修正影響の調査というように、現在の作業の前後にある仕事を一つ選びます。
顧客との直接調整を経験していなくても、上司へ渡す確認事項をまとめた経験は整理できます。自分が決めていない内容まで「要件定義を担当」と広げず、誰の判断をどのように支えたかを具体的に書きましょう。
スキルシートは、使った言語だけでなく担当範囲を書く
例えば、次のように記載を具体化できます。あくまで書き方の例であり、実際に担当していない工程を加えるための文章ではありません。
| 項目 | 短すぎる記載 | 具体化する内容 |
|---|---|---|
| 技術 | Javaによる実装 | 対象機能・利用技術・制約 |
| 仕様 | 機能追加 | 確認した不明点と確認先 |
| テスト | 単体テスト | 作成・実行した検証項目 |
| 不具合 | バグ修正 | 再現・調査・修正確認の範囲 |
| AI利用 | AIで開発 | 利用目的・検証・採否の判断 |
文章にするなら、「既存機能の仕様を確認し、Javaで検索機能を追加。単体テストを作成・実行し、不具合の再現条件整理と修正後の確認まで担当」のように、実際の仕事が伝わる形にします。時間短縮や品質改善の数値を加える場合も、記録のある範囲だけにしてください。
スキルアップしたくても経験を積めないなら、所属先の案件と育成体制を確認する
本人が勉強しても、配属される仕事が変わらなければ、実務経験を増やせないことがあります。同じ定型作業だけを担当する状態が続くなら、個人の努力だけでなく、会社がどのような経験機会を用意できるかも確認すべきです。
AIによって定型的な実装やテスト実行が短縮されれば、経験の浅い人へ任せながら育てる仕事が減るシナリオも考えられます。初級者ほど、学習する内容だけでなく、それを実務で試し、レビューを受けられる場があるかを確認する意味があります。
現案件で広げられる仕事と、確認してくれる人を決める
「上流工程をやりたい」という希望だけでは、具体的な役割を調整しにくくなります。「次の機能追加でテスト設計案を作り、レビューを受けたい」のように、対象と範囲を絞って上司へ相談してみてください。
例えば、担当機能の正常系・異常系の確認項目をまとめ、責任者にレビューしてもらいます。指摘を反映したテストを実行し、その結果まで残せば、単に手順を実行した経験と区別して説明できます。顧客との契約範囲を超える作業や、許可のない環境変更は行わないでください。
次の案件で経験を積むなら、工程・条件・見直し時期まで聞く
現案件で担当を変えられない場合は、次の配属を確認します。「将来は設計もできる」という説明だけでなく、どの条件を満たすと設計を含む案件へ応募できるのか、誰が判断するのかを聞きましょう。
具体的な案件が未確定でも、現在のスキルで紹介可能な範囲と、次に状況を確認する時期は相談できます。同じ回答が続いているなら、学習を続けることと並行して、他社で経験を広げられるか比較する理由になります。
| 現在の状況 | 具体的に確認すること |
|---|---|
| 現案件で担当を増やせる | 追加する工程とレビュー担当 |
| 現案件では難しい | 次の配属条件と確認時期 |
| 同じ作業案件しか紹介されない | 他社の担当工程と育成内容 |
| 実務でAIの利用が禁止 | 許可された学習環境での検証 |
AIの学習経験を、顧客案件の実務経験に置き換えない
顧客案件でAIを使えないなら、公開情報や自作の小さなアプリを使う学習方法もあります。その場合は「個人学習」と明記し、作った機能、試した検証、発見した問題を説明してください。
業務のソースコードやログを個人のAIアカウントへ送ればよい、という話ではありません。顧客名を消しても、処理内容や識別子が機密情報に当たる可能性があります。
案件が減っているなら、SES営業に「案件数」以外も確認する
確認したいのは次の配属先だけではありません。紹介が進まない理由、待機中の仕事と賃金、次の経験を積むための支援を分けると、何を急いで確認すべきかが明確になります。
紹介できる案件と、進まない理由を具体的に聞く
案件一覧の件数だけでは、現在も募集中なのか、自分の経験が必須条件を満たすのかが分かりません。営業担当者には、紹介可能な案件の担当工程と条件、直近で紹介に至らなかった理由をセットで聞きましょう。
営業へ確認する質問
- 現在の経験で紹介できる案件は、どの技術・工程の仕事ですか。
- 募集条件との不一致や見送りでは、具体的に何が理由になっていますか。
- 次にどの経験を増やすと、紹介できる案件の範囲が広がりますか。
- 待機になる場合、社内業務・給与・手当はそれぞれどう扱われますか。
- 次の配属までに受けられる支援と、状況を再確認する時期を教えてください。
給与や契約更新の説明は、人事・労務担当にも確認しましょう。どの契約書や就業規則に基づく説明なのかを記録しておくと、後から認識の違いを確認しやすくなります。
案件終了、待機、雇用終了は別の状態
所属会社に雇用されて働く人は、顧客との案件の契約と、自分と所属会社との雇用契約を分けて確認する必要があります。「SES」「派遣」「請負」「準委任」といった呼び名だけで、雇用や給与の扱いを決めつけないでください。
- 案件の終了
- 顧客に対する、その業務への参画が終わること。
- 待機
- この記事では、所属会社との雇用は続いているものの、次の配属先が決まっていない状態を指します。
- 雇用の終了
- 所属会社との雇用関係が終わること。案件の終了と同じ意味ではありません。
例えば、広島県の労働相談資料では、労働者派遣の契約を派遣先が中途解除しても、派遣元と労働者の雇用契約が直ちに終了するわけではないと説明されています。これは派遣契約についての説明であり、名称だけで別の契約へそのまま当てはめるものではありません。
出典:広島県『9-3 派遣契約が中途解除されたとき,派遣労働者は解雇されるのか|労働相談Q&A』(2025年12月9日掲載)(2026年9月28日確認)
失業の有無だけでなく、待機時の収入と次の条件も確認する
配属が決まらない間の基本給・各種手当、社内で担当する仕事、雇用契約の期間と更新条件を確認してください。次の案件については、仕事内容とあわせて、勤務地や出社頻度、夜間対応などの条件も見ておきましょう。
顧客への請求単価と、社員として受け取る給与も同じものではありません。案件の条件変更が、そのまま自分の給与へ反映されると決めつけず、雇用上の条件と分けて確認してください。
「案件がないから給与は払わない」といった説明を受けても、会社の説明だけで適法性が決まるわけではありません。逆に、「SESなら待機中も必ず同じ金額」とも一律には言えません。
厚生労働省の総合労働相談コーナーでは、解雇、雇止め、配置転換、賃金の引下げなどを対象に、無料で相談を受け付けています。雇用上の相談と、次の求人を探すための転職相談は、目的に応じて使い分けましょう。
出典:厚生労働省『総合労働相談コーナーのご案内』(2026年9月28日確認)
転職するなら「SESを辞めるか」より、次に積める経験で会社を比較する
転職しても、担当する仕事が今と変わらなければ、同じ不安を抱える可能性があります。会社の名前や「自社開発」という区分だけでなく、入社後に何を任されるかを確認することが重要です。
自社開発・受託・社内SEなら自動的に安全とは限らない
仮に自社開発の会社へ入っても、担当が決められた修正作業だけなら、仕様や設計を判断する経験は増えないかもしれません。社内SEという名称でも、問い合わせの転送が中心なのか、業務部門と要件を整理するのかで仕事内容は異なります。
反対に、SESでも、設計やテスト計画を任され、経験のある人からレビューを受けられる案件なら、次につながる経験を積める場合があります。会社の種類を変えることと、仕事の中身を変えることを分けて考えましょう。
求人票の言葉を、配属後の具体的な仕事に置き換える
「上流工程に挑戦できる」「充実した研修」といった説明は、その内容まで確認して初めて比較に使えます。次の質問を、転職先の採用担当者や転職エージェントへ聞いてみてください。
| 確認すること | 質問の要点 |
|---|---|
| 最初の担当工程 | 最初の配属でどこまで担当するか |
| 工程を広げる条件 | 設計・開発へ移った例と必要条件 |
| レビュー体制 | 誰が何をレビューするか |
| 育成の実務 | 研修後に経験できる仕事は何か |
| AIの利用 | 利用できる工程・ルール・支援は何か |
| 配属の決め方 | 本人の希望をいつ、どう確認するか |
| 待機・配属変更 | その期間の業務と賃金の扱い |
例えば、「テスト実行から開発へ移った人がいますか」という質問には、その人が何を準備し、どの時点で、誰の判断で移ったかまで聞くとよいでしょう。過去の実例があっても、自分にも同じ配属が保証されるとは限らないため、応募時の条件と分けて確認します。
経験を増やすためでも、給与・働き方を無視しない
担当工程が広がる求人でも、年収が大きく下がる、夜間対応が増える、通勤が難しいといった条件なら、生活との両立を検討する必要があります。成長という言葉だけを理由に、合わない条件を受け入れる必要はありません。
比較するときは、基本給と変動する手当を分け、想定される労働時間や勤務地、雇用形態も並べてください。求人の記載と面接で聞いた説明、提示された労働条件に違いがないかも確認しましょう。
現在のSES経験で応募できる求人を見て、担当工程と育成体制を現職と比べておきましょう。応募先がまだ決まっていなくても、必要な経験との差を知るための求人確認は始められます。
将来、レビューや設計までAIが担うようになれば、残る工程も変わり得る
コードを書く仕事からレビューする仕事へ移れば、将来も必ず安全になるのでしょうか。そうとは言い切れません。すでにAIによるレビュー補助はあり、今後どこまで任せられるかは、能力と運用条件の変化に左右されます。
現在の限界を、そのまま将来の境界にしない
2026年2月公表の「International AI Safety Report 2026」は、ソフトウェア開発を含むAIエージェントの作業能力を取り上げています。一方で、複雑な仕事や長い計画には限界があり、誤りも残ると整理しています。また、その先の能力向上についても、発展の速度には大きな不確実性があるとしています。
これは同報告書が公表時点の知見を整理したものです。「今は人の確認が必要な仕事がある」ことと、「その確認を人が永久に行う」ことは、分けて考える必要があります。
出典:International AI Safety Report『International AI Safety Report 2026』(2026年2月3日公開)(2026年9月28日確認)
人工超知能が実用化されれば、反復的な知的作業の代替はさらに広がり得る
人工超知能(ASI、スーパーインテリジェンス)は、人間の知的能力を幅広い領域で上回るAIを指す概念です。登場時期や実際の能力、利用費用が確定しているわけではありません。
ただ、仮にそのようなAIが実用化され、仕様理解から設計、実装、テスト、レビュー、修正までを、人より安価かつ十分な信頼性で実行できるようになった場合はどうでしょうか。編集部は、現在は人に残ると考えられている確認業務も含め、反復的な知的作業の大部分を人手で行う必要性が薄れるシナリオを考えています。
人間の確認が残るとしても、各成果物を人が一件ずつ見る形ではなく、AIの運用方針や例外の扱いを限られた人数で管理する形へ変わるかもしれません。「確認者になる」という対策だけを、永久の安定につながるものとして扱うべきではありません。
将来が不確実だからこそ、今の担当範囲を固定しない
将来の変化が大きいなら、今から何をしても意味がないという結論にはなりません。現在の募集条件に合う経験を増やし、仕事の変化を確かめながら担当範囲を更新することと、一つの作業だけを続けて状況を確認しないことは、別の選択です。
目指すのは「AIに絶対に代替されない肩書」を一つ選ぶことではなく、何を任されるかが変わったときに、次の役割を選べる経験と情報を持つことです。
人件費のほうが安いSES企業でも、AIを使う競合との生産性差は無視できない
人手による開発のほうが安く済む間は、人が担当する仕事が残る場合があります。ただし、「今の会社ではAI化のほうが高い」という理由だけで、将来の受注や雇用まで守られるとは限りません。
AIの月額料金とエンジニアの給与だけを比べない
比較するなら、同じ品質・範囲の成果を完成させるまでの費用をそろえる必要があります。AI側には利用料だけでなく、環境整備、連携、情報管理、検証、手戻りへの対応もあります。人手側でも、実装する人の給与だけでなく、設計・レビュー・管理にかかる仕事量を考えます。
| 比べる費用 | 人手中心の体制 | AIを組み込む体制 |
|---|---|---|
| 作業 | 実装・調査などの工数 | AI利用料と操作の工数 |
| 導入・準備 | 人員の受入れ・教育 | 環境構築・連携・教育 |
| 品質確認 | レビュー・テスト | 生成物の検証・修正 |
| 運用 | 保守・問い合わせ対応 | 保守とAI利用管理 |
| 手戻り | 不具合の調査・再作業 | 誤出力の調査・再作業 |
作業量が少なく、変更もほとんどない案件では、AI向けに環境を整える費用を回収できない場合があります。顧客の情報管理や利用許可が整わない場合も、すぐに同じ方法へ移せるわけではありません。
競合が同じ成果を低コストで出せれば、発注される条件は変わる
一方、競合企業が同等の品質をより少ない総工数で提供できるようになれば、発注側には予算や納期、体制を見直す理由が生まれます。その結果として、従来の人数を前提とする提案が通りにくくなったり、発注先が変わったりするシナリオが考えられます。
人件費の安さだけで対抗し続ける会社では、賃金を引き上げる余地や育成へ回す余力が小さくなるおそれもあります。受注を維持できなければ、事業縮小や撤退、企業の淘汰につながる場合もあるでしょう。これはすべてのSES企業に起きると確定した予測ではなく、価格と生産性の差が受注へ影響する場合の分析です。
企業規模ではなく、受注と育成を維持できるかを見る
東京商工リサーチによると、2026年1〜6月の情報サービス業の倒産は、負債1,000万円以上を対象とする集計で166件でした。ただし、情報サービス業はSESだけの分類ではなく、この166件を「AIによって倒産したSES企業数」と読むことはできません。
出典:東京商工リサーチ『2026年上半期の「情報サービス業」倒産 166件 過去10年で最多 小・零細規模の淘汰が加速へ』(2026年7月14日公開)(2026年9月28日確認)
小規模でも専門的な案件を継続して受注し、技術や育成へ投資できる会社も考えられます。規模だけで危険・安全を決めず、会社が今後どの仕事を受注し、自分にどんな経験を任せる予定なのかを確認しましょう。
見るべきなのは「AIツールを導入しました」という宣言だけでもありません。そのツールを使って、誰が、どの仕事を改善し、品質と成果をどう確かめているのか。現職や応募先について、説明を聞きたい点はそこです。
AI失業が心配なら、失業してからではなく在職中に転職市場を確認する
今の案件が終わってから、初めて自分の経歴で応募できる求人を調べる必要はありません。収入を得ながら、担当工程・育成・働き方を比較できるうちに、選択肢を把握しておくことをおすすめします。
求人を見て、不足する経験と譲れない条件を分ける
気になる求人をいくつか選び、必須の経験、自分が説明できる経験、入社後に積める経験を並べてみましょう。言語名だけは合っていても、設計経験が必要なのか、テスト実行から応募できるのかで、準備することが変わります。
給与や勤務地など、生活上譲れない条件は別に書き出してください。技術の不足を補うための学習と、生活に合わない条件を受け入れることを混同しないようにします。
現在の担当を整理する
直近の案件から担当工程、判断したこと、レビューを受けた内容をメモにする。
求人と照らし合わせる
必須条件を確認説明できる経験と不足する経験を分け、給与・勤務地などの条件も比較する。
担当範囲を質問する
応募前・面談時最初の配属、レビュー担当、育成の進め方、待機や配属変更の扱いを聞く。
現職と比べて決める
退職を先に決めない現職で増やせる経験と他社の条件を比べ、残るか応募を進めるか判断する。

転職エージェントには「辞めたい」だけでなく、次に経験したい仕事を伝える
希望条件が「SES以外」だけでは、転職後の仕事内容が改善するかを比べにくくなります。相談する際は、現在の担当と、次に広げたい工程を具体的に伝えてください。
以下は相談文の例です。自分の経験と希望に合わせて、該当しない項目を外して使えます。
現在SES企業に所属し、主に実装・テストを担当しています。今後は設計、コードレビュー、不具合の原因調査、顧客との仕様調整など、担当範囲を広げたいと考えています。
現在の経験で応募できる求人のうち、入社後にこれらの工程を経験できる企業を教えてください。最初の配属とその決め方、レビュー・育成体制、AIツールの実務利用についても確認したいです。
待機や配属変更がある場合は、その期間の給与・業務・支援内容も教えてください。まずは現職と条件を比較したうえで、転職するかどうかを考えたいです。
紹介された求人は、支援サービスが扱う求人の範囲でもあります。紹介が少ないことだけで、自分の経験に需要がないと判断しないでください。希望する経験年数や地域が支援対象かを確かめ、必要に応じて企業の採用ページなど別の探し方も併用しましょう。
現職で経験を広げられるなら、残る選択もできる
転職市場を確認することと、今すぐ退職することは別です。現職で次の担当工程とレビュー体制が具体的に決まるなら、その経験を積んでから改めて比較する方法もあります。
現職で経験を積むことを検討
- 次に担当する工程が具体的に決まっている
- レビューを受けられる体制がある
- 給与・働き方を含めて条件が合う
他社の環境も比較しておく
- 同じ作業から広がる見通しが立たない
- 希望する工程を持つ案件が紹介されない
- 配属や育成について具体的な説明がない
転職サービスへ登録する場合は、職務経歴の公開範囲や連絡方法を確認し、案件の機密情報や顧客のソースコードは提出しないでください。登録したことだけで、希望する配属や採用が保証されるわけでもありません。
現在のSES経験で選べる求人を確認し、次にどんな仕事を経験できるかまで比較しておきましょう。案件がなくなるかどうかを待つより、現職と他社を比べて判断できる材料を先に持つためです。
まとめ|「エンジニアの仕事が残るか」ではなく「自分の参画枠と次に積める経験」で判断する
開発の仕事や人による確認が残っても、従来と同じ参画枠が維持されるとは限りません。AIによる工数削減と、新しい需要の両方を見ながら、自分が任される仕事を確認する必要があります。
まず、直近の案件で担当した工程と判断した内容を書き出し、今の会社で次に何を経験できるかを聞いてみてください。見通しが立たないなら、在職中に他社の担当工程・育成・給与条件と比べてください。今すぐ辞めることではなく、選べるうちに判断材料を持つことが最初の一歩です。