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石川県内のAI活用事例|県内企業・自治体の導入効果とは

更新日2026.09.06
確認時点2026年9月6日時点
調査数県事例集15社+デジタル化実践道場6社+自治体2件+個別企業2社

石川県でAIを導入した企業の事例を探すと、2018年度の県事例集から、2023年度のデジタル化実践道場、2025〜2026年に公開された生成AI・AIエージェントの事例まで、時期の異なる情報が見つかります。技術名だけを並べても自社へ応用できるかは分かりません。事例を見るときは「何を入力データにしたか」「どの作業をAIへ任せたか」「導入後に何を測ったか」の3点を確認すると、自社に近い事例を見つけやすくなります。この記事では、石川県・ISICO・自治体・企業が公開している一次情報を中心に、AIとIoTを分けながら県内事例を整理します。

この記事でわかること

  • 2018年度の県事例集、2023年度のデジタル化実践道場、アルム・岡田研磨、自治体の公開事例
  • 文書処理・判定予測の2系統に分けた再現条件と、各事例の入力データ
  • IoT・RFIDの見える化事例がAIではない理由と、AI導入の前段階になる位置づけ
  • 自社で再現できるかを判定する3条件と、真似ると失敗する条件

事例を読む前に、多くの方が抱く疑問と短い答えを先にまとめます。

石川県のAI活用事例に関する疑問と短い答え
疑問短い答え
企業名まで公開の事例はあるか県事例集、デジタル化実践道場、ISICO、自治体の公式資料で確認できます
事例集の15社はすべてAIかAIは5社、残り10社はIoT・RFIDによるデータ収集です
事例はいつのものか2018年度の県事例集から2026年公開の企業事例まであります
自社でも再現できるか入力データ・反復量・運用担当を確認すると判断しやすくなります
投資額は公開されているか事例集に投資額の記載はありません
※答えの根拠と条件は本文の各章で解説しています。

早見表の答えがなぜそうなるのかを、事例の一次情報に沿って順に確認します。

石川県のAI活用事例は企業名と数値まで公開された事例から読み解く

石川県の公式資料には、同じ「AI活用事例」でも時期と目的が異なるものがあります。本記事では、2018年度の「AI・IoT導入支援事例集」、2023年度の「デジタル化実践道場」、2025〜2026年に公開された岡田研磨・アルムの事例、金沢市・加賀市の自治体事例を分けて扱います。

2018年度の事例集は15社を1社1ページで掲載しており、導入前の課題、取り組み、効果または目標がまとまっています。ただし、15社すべてがAIを使ったわけではありません。AIによる読み取り・判定・予測・分析を含む5社と、IoT・RFID・センサー等によるデータ収集・見える化を中心とする事例を分けて読む必要があります。

一方、2023年度のデジタル化実践道場では、生産計画最適化、AI外観検査、需要予測といった、より新しいAI活用の検証結果も公開されています。古い事例だけで石川県の現状を判断せず、用途が近い年代の事例を確認しましょう。

県の支援事業で採択された15社のうちAIを使ったのは5社

AIを使った5社は、用途で見ると文書処理が1社、判定・予測・分析が4社に分かれます。各社の所在地と用途を、事例集の記載に沿って一覧にします。

石川県AI・IoT導入支援事例集のうちAIを使った5社(2018年度採択)
企業名所在地業種AIの用途事例集記載の効果採択年度
有限会社いしぐろ造形工房小松市建築用金属製品製造発注書のAI-OCR読み取りとRPA連携納品処理時間を30%削減2018年度
ヴィスト株式会社(当時)金沢市障害者向け就労支援人事データの適性分析新拠点の幹部8名を配置2018年度
株式会社エイ・エム・シィ志賀町超硬合金製金型製造加工プログラムのズレ自動補正作成時間60分から10分へ短縮2018年度
有限会社かわに金沢市五郎島金時の生産画像認識による形状判定正答率85%(目標95%)2018年度
株式会社心結金沢市着物レンタル来店者数の予測予測誤差20%以内が目標2018年度
※効果の数値は事例集記載時点のものです。現在の稼働状況は公開されていません。

5社を見ると、心結は予約・レジ・手書きメモの集約、ヴィストは紙の人事情報の電子化など、AIへ渡す情報を先に整えている事例があります。なお、2018年度に掲載されたヴィスト株式会社は、2025年に株式会社ミチルワグループへ吸収合併され、現在はヴィストカンパニーとして事業を継続しています。事例の効果数値は2018年度当時の記録として読んでください。

出典:石川県商工労働部産業政策課『AI・IoT導入支援事例集<H30年度AI・IoTを活用した業務効率化・省力化支援事業採択事例>』(公開日記載なし)(2026年9月6日確認)

2023年度のデジタル化実践道場では、生産計画・外観検査・需要予測を検証

石川県は、デジタル化実践道場の取組結果も公開しています。2023年度の実践コースでは、製造業向けにAIによる生産計画最適化と外観検査、飲食・小売等のサービス業向けに需要予測を扱っています。

石川県デジタル化実践道場で公開されたAI活用例
テーマ参加企業取り組み
生産計画最適化大同工業・ケー・エヌ・テー・曽田製作所AIが設備稼働・人員配置等を考慮して生産計画を立案
外観検査朝日電機製作所画像を使ったAI外観検査の実現可能性を検証
需要予測テルメ金沢・ぶどうの木店舗データ等から需要や顧客傾向を可視化
※石川県『デジタル化実践道場』の取組結果ページに掲載された企業です。各社PDFには実証内容・課題・今後の展望が記載されています。

朝日電機製作所の報告では、対象としたワークで「物体検知+ルールベース」の組み合わせによる不良品検知の可能性を評価しています。一方で、多品種少量生産のため、どの基板・どの工程へ導入するか、ソフトウェア・ハードウェア・ランニングコストを含めた費用対効果の検証が課題として残りました。

この事例は、「AIで検査できるか」だけでは導入判断にならず、対象品種、工程、費用まで含めて本番運用を決める必要があることを示しています。

出典:石川県『「デジタル化実践道場」の取組結果について』(公開日記載なし)(2026年9月6日確認)

自治体はチャットボットと庁内ChatGPTの2例

自治体では、金沢市のAIチャットボットと加賀市の生成AI活用を公式情報で確認できます。金沢市は「AI活用行政情報自動案内システム」を現在も公開しており、手続きや制度に関する質問へAIチャットボット「しつぎおとうふくん」が24時間回答します。

加賀市は2023年5月31日からChatGPTを業務へ導入し、文書作成、情報収集・分析、政策提案の支援などを用途として公表しました。個人情報を使わない等の利用ルールとガイドラインも同時に整備しています。さらに2025年6月の市議会記録では、ChatGPTをはじめとする言語系生成AIを情報収集、要約、誤字脱字の添削、仕様書のひな形作成などへ利用していると説明しており、導入後も庁内利用が続いていることを確認できます。

出典:金沢市『AI活用行政情報自動案内システム(AIチャットボット)』(公開日記載なし)(2026年9月6日確認)
出典:加賀市『【プレスリリース】市役所業務におけるChatGPT の運用を開始します』(2023年5月30日公開)(2026年9月6日確認)
出典:加賀市議会『令和7年6月20日(金)午前9時30分開議』(2025年6月20日)(2026年9月6日確認)

本記事で扱う事例を、AIの用途で4つに整理すると次のようになります。

生成・自動化

図面や文書からプログラム・書類を自動で作る用途。事例①②が該当します。

読み取り

紙の書類や画像から文字・形状を読み取る用途。事例③⑤が該当します。

予測

過去の実績データから来店者数などを見積もる用途。事例⑥が該当します。

分析

人事や加工のデータから最適な組み合わせを導く用途。事例⑦が該当します。

事例① 金沢発の製造AI「ARUMCODE」は熟練の勘をデータ化した全国区の事例

事例① 金沢発の製造AI「ARUMCODE」は熟練の勘をデータ化した全国区の事例
県事例集の外にも、現在進行形でAI活用を続けている県内企業があります。1社目は金沢市戸水のアルム株式会社です。公式会社概要では2006年8月設立で、NCプログラムを自動生成する製造AI「ARUMCODE」や、工作機械・周辺自動化システムを開発しています。ARUMCODE1は2021年にリリースされ、完全自動型の切削加工機TTMCへ展開しています。

アルム株式会社の概要
項目内容
所在地石川県金沢市戸水1-61
設立2006年8月
主な製品ARUMCODE(NCプログラム自動生成AI)・ARUM Factory365(サブスク型クラウド)
展開ARUMCODE・TTMC・ARUM Factory365など製造自動化へ展開
受賞歴グッドデザイン賞2021年度・CEATEC AWARD 2022「デジタル大臣賞」ほか
公式サイト公式サイトを見る
※公式サイト・ISICO・Microsoftの公開情報にもとづきます(2026年9月6日確認)。

アルムの事例で参考になるのは、熟練者の判断を大量の加工条件へ置き換えている点です。2026年にMicrosoftが公開した事例では、ARUMCODEの出荷準備が整うまでに12年を要し、開発者が約400万の切削条件を一つのアルゴリズム式へ変換したと紹介されています。アルムの公式FAQでも、ARUMCODE1が数百万規模の切削条件データベースからアルゴリズムを抽出していることを確認できます。

2026年時点では、ARUMCODEとTTMCに加えて、自然言語で作業者を案内する対話型AIインターフェース「KAYA」の開発も紹介されています。AIを一度導入して終わりではなく、蓄積した加工データを基盤に製品を拡張している事例として見ることができます。

金沢市のアルムが熟練技術者の加工条件をデータ化し製造AIを開発するまでの流れを示す図

規模こそ全国区ですが、出発点は「熟練者の頭の中にある判断を、時間をかけてデータに置き換えた」ことにあります。これは後述する事例集の5社、たとえば五郎島金時の等級選別をカメラのデータに置き換えたかわにの取り組みと、構造としては同じです。自社の現場に置き換えるなら、規模の大小ではなく「誰の、どの判断を、どんなデータに置き換えるか」という問いの立て方をこの事例から持ち帰ってください。

出典:石川県産業創出支援機構『石川県バーチャル工業団地 アルム株式会社』(2025年3月14日更新)(2026年9月6日確認)
出典:アルム株式会社 公式サイト(公開日記載なし)(2026年9月6日確認)
出典:Microsoft Source『日本のアルム、職人技をスケーラブルな AI へ ― 精密製造を変革』(2026年3月25日公開)(2026年9月6日確認)

事例② 津幡町の岡田研磨はAIエージェントで業務システムを内製している

事例② 津幡町の岡田研磨はAIエージェントで業務システムを内製している
2社目は、AIで開発会社に頼らない道を選んだ津幡町の岡田研磨株式会社です。1974年設立、建設機械などに使う「丸もの」部品の研磨・旋盤加工を手がける従業員80人の製造業です。かほく市の高松工場とあわせ、約200台の工作機械を動かしています。DXを主導する岡田雄太専務はプログラミングの技術を持ちませんが、AIエージェントとの日本語での対話を重ねて業務アプリを構築しています。中小機構が運営するJ-Net21の取材記事では、2,000万〜3,000万円級に相当するシステムを約300時間で作り上げたと語られています。そこに至るまでに重ねたAIとの対話は、約2年・1,000時間にのぼるそうです。

岡田研磨株式会社の概要
項目内容
所在地石川県津幡町太田ア7(津幡工場)・かほく市に高松工場
設立1974年4月
従業員数80人
事業内容建設機械・シリンダー・一般産業機械等の部品加工・組立
AI・DXの取り組みAIエージェントによる業務アプリの内製・約20種類の内製アプリが稼働
公式サイト公式サイトを見る
※J-Net21掲載の取材記事にもとづきます(2026年9月6日確認)。

導入の進め方にも、他社が真似できる工夫があります。最初に試験導入したタブレットは「紙のほうが見やすい」と現場に浸透しませんでした。そこで同社は、使っても使わなくてもよい仕組みではなく「全員が毎日必ず行う業務」である検査成績書の記入からシステム化し、1人1台のタブレットとあわせて配布します。毎日触れざるを得ない業務を入口にしたことで、デジタル化が定着しました。現在は約20種類の内製アプリが稼働し、ペーパーレス化で紙をA4換算月5,600枚、労働時間を全社で月330時間削減したと記事では紹介されています。

岡田研磨が検査成績書のシステム化からAIエージェントによる内製へ進んだ段階を示す図

この事例を本記事の3条件に当てはめてみてください。担当者は岡田専務の1名、繰り返し量は現場従業員が毎日5〜6枚書く検査成績書、データ集約はタブレット直接入力への一本化と、3つがきれいに揃っています。規模の大きな開発ではなく「現場を楽にする業務」から順にデータ化した進め方は、社内にIT専任者がいない会社でも持ち帰れる型です。取引先がサプライチェーン全体でデータの可視化を求める流れの中で、集めたデータを信頼獲得に使うという視点も、下請け構造を持つ県内製造業には示唆があります。

出典:J-Net21『「デジタルを会社の武器に」 AIを活用し業務アプリ内製化【岡田研磨株式会社(石川県津幡町)】』(2025年7月31日公開)(2026年9月6日確認)
出典:ISICO『【巻頭特集】CASE2 現場を楽にすることを追求し、AIと対話を重ねて業務アプリを構築 ~岡田研磨(株)』(2026年2月2日更新)(2026年9月6日確認)

文書・問い合わせ業務のAIは「紙と定型の繰り返し」があれば再現しやすい

製造現場のない事務系の会社でも、県内事例は参考になるのでしょうか。文書処理と問い合わせ対応の事例は、業種を問わず「紙や定型文の繰り返し」がある会社なら再現の余地があります。県事例集のいしぐろ造形工房、金沢市のチャットボット、加賀市のChatGPT導入がこの系統にあたります。

事例③ いしぐろ造形工房:発注書のAI-OCRで納品処理を3割短縮(2018年度)

事例③ いしぐろ造形工房:発注書のAI-OCRで納品処理を3割短縮(2018年度)

有限会社いしぐろ造形工房の概要
項目内容
所在地・業種小松市・建築用金属製品の製造(精密板金)
使ったAIAI-OCR(発注書の読み取り)+RPA
公開されている効果納品処理を1日3時間45分から約2時間45分へ、30%削減
公式サイト公式サイトを見る
※事例集の記載と公式サイトにもとづきます(2026年9月6日確認)。

小松市で建築用金属製品を製造するいしぐろ造形工房は、ベテラン社員の経験に頼る事務作業が多く、産休などで代替要員を置いても引き継ぎが難しいという課題を抱えていました。取り組みとして、発注書(図面)の一部をAI-OCRで読み取り、RPAと組み合わせて納品処理業務の一部を自動化しています。事例集によると、納品処理にかかる時間は1日3時間45分から約2時間45分へ、30%の削減を達成しました。

この事例の入力データは「発注書という定型の紙」です。AIが読むのは図面の決まった位置にある文字情報であり、RPAがその後の転記を担います。つまり、毎日同じ書式の書類を同じ手順で処理している業務があれば、製造業でなくても同じ構造を当てはめられます。

この事例から持ち帰るポイント

  • 入力する紙の書式が決まっていること(フォーマットが揃っていない書類は先に統一する)
  • AIの後段にRPAなどの転記処理を組み合わせること

紙の発注書や問い合わせをAI-OCRや生成AIで処理する事務業務のデータの流れ図

事例④ 金沢市・加賀市:問い合わせ応答と文書作成に生成AIを適用

事例④ 金沢市・加賀市:問い合わせ応答と文書作成に生成AIを適用

金沢市・加賀市の取り組みの概要
項目内容
主体金沢市(AI活用行政情報自動案内システム)・加賀市(庁内ChatGPT導入)
使ったAIAIチャットボットによる問い合わせ応答/生成AIによる文書作成支援
公開されている内容24時間365日の自動応答/運用マニュアルとガイドラインの整備を前提とした導入
公式サイト公式サイトを見る
※各市の公式ページにもとづきます(2026年9月6日確認)。

金沢市のチャットボットは、市民からの手続きや制度に関する質問に24時間答える仕組みです。問い合わせの大半が「よくある質問」の範囲に収まる業務で、回答の元になる情報が既に整理されていることが前提になります。中小企業に置き換えると、営業時間・料金・申込方法といった定型の問い合わせが多い業種ほど、同じ構造を再現しやすいと言えます。

加賀市のChatGPT導入は、職員の文書作成や企画の下書きを支援する使い方です。チャットボットが「外部からの質問に答える」用途であるのに対し、ChatGPT導入は「内部の文書を作る」用途にあたります。加賀市は利用ルール・ガイドライン・運用マニュアルを用意したうえで運用を開始しています。企業で同様のツールを導入するときも、利用するサービスの契約条件に合わせて、入力できる情報と確認方法を先に決めておくと運用しやすくなります。

文書・問い合わせ系のAIを導入する場合、県内事例から読み取れる順序は次のとおりです。

1

定型業務を1つ選ぶ

対象選定

毎日・毎週繰り返す書類処理や問い合わせを1種類だけ選びます。

2

入力と出力を固定する

設計

AIに渡す情報の書式と、受け取る結果の形を決めます。

3

利用ルールを文書化する

運用準備

入力してよい情報と禁止する情報を社内ルールとして明文化します。

4

導入前の時間を計測する

基準値

現在の処理時間を記録し、比較できる状態にします。

判定・予測のAIは「人の目と勘でやっている作業」をデータ化できるかで決まる

現場の熟練者が目と勘で判断している作業をAIに置き換えられるか、という問いは製造業・農業・サービス業に共通します。県事例集でAIを使った5社のうち4社がこの系統で、いずれも「熟練者の判断に使っている情報を、カメラや予約データや人事データに置き換える」ところから始めています。

画像・予約・人事の各データを入力として判定や予測を行う石川県内事例の入出力対応図

事例⑤ 画像判定:かわにの等級選別(2018年度)

事例⑤ 画像判定:かわにの等級選別(2018年度)

有限会社かわにの概要
項目内容
所在地・業種金沢市粟崎町・五郎島金時の生産(農業生産法人)
使ったAIカメラ撮影+画像認識による形状の自動判別
公開されている効果正答率85%(目標は熟練者と同等以上の95%)
公式サイト公式サイトを見る
※事例集の記載と公式サイトにもとづきます(2026年9月6日確認)。

金沢市粟崎町で五郎島金時を生産する有限会社かわにでは、重さ8通りの等級は計量で判別できる一方、形6通りの階級は経験豊富な熟練者しか判別できず、長時間の選別作業に拘束されていました。取り組みは、さつまいもをカメラで撮影し、AIの画像認識で形状を自動判別するものです。事例集の記載時点で正答率は85%、目標は熟練者と同等以上の95%とされています。

この事例で注目したいのは、目標値と実績値が分けて書かれている点です。85%という数値は「誰でも選別できる体制」には届いていない段階の記録であり、導入すれば即座に熟練者を置き換えられるわけではないことを示しています。

この事例から持ち帰るポイント

  • 熟練者の判断がカメラなどで撮影できる情報に置き換えられるかを先に確かめる
  • 公開されている数値が実績値か目標値かを区別して読む

事例⑥ 需要予測:心結の来店者数予測(2018年度)

事例⑥ 需要予測:心結の来店者数予測(2018年度)

株式会社心結の概要
項目内容
所在地・業種金沢市本町・着物レンタル(金澤きものレンタル 心結)
使ったAI予約・レジ・手書きメモを集約したデータからの来店者数予測
公開されている目標予測誤差20%以内
公式サイト公式サイトを見る
※事例集の記載と公式サイトにもとづきます(2026年9月6日確認)。

金沢市本町で着物レンタルを営む株式会社心結は、経験と勘で来店者数を予測してスタッフを手配していたため、人員の不足や余剰が頻発していました。取り組みでは、まずWeb予約・レジの来店実績・飛び込み客の手書きメモを1つのシステムに集約し、そこに観光イベントの有無などを加えてAIが来店者数を予測します。目標は予測誤差20%以内です。

入力データの集約が先、AIが後という順序がはっきり表れた事例です。観光客の多い金沢の中心部で、週末やイベント日に需要が跳ねる業態にとって、予測の対象は「勘で決めていたシフト」であり、AIはその判断材料を数値に置き換える役割を担います。

この事例から持ち帰るポイント

  • バラバラの記録(予約・レジ・手書きメモ)を1か所へ集約する工程を先に置く
  • 予測させたい対象を「シフト」など具体的な意思決定に絞る

事例⑦ データ分析:ヴィストの人材配置・エイ・エム・シィの加工補正(2018年度)

事例⑦ データ分析:ヴィストの人材配置・エイ・エム・シィの加工補正(2018年度)

ヴィスト株式会社・株式会社エイ・エム・シィの概要
項目内容
所在地・業種ヴィスト=金沢市広岡・障害者就労支援/エイ・エム・シィ=金属加工
使ったAI人事データの分析による配置判断/加工データの分析による補正
公開されている効果新拠点の拠点長3名・責任者3名・次期拠点長2名の配置に活用
公式サイトヴィスト株式会社の公式サイトを見る
※事例集の記載と公式サイトにもとづきます(2026年9月6日確認)。エイ・エム・シィの公式サイトは確認できなかったため記載していません。

2018年度当時のヴィスト株式会社は、障害者向け就労支援の新拠点を増やす中で、紙の人事情報から資格を優先して管理職を選んでおり、経験や適性を生かした配置ができていませんでした。人事管理システムを導入して従業員アンケートを電子化し、経験や適性をAIが分析する仕組みに切り替えた結果、新拠点の拠点長3名・責任者3名・次期拠点長2名の配置に使われています。

志賀町の株式会社エイ・エム・シィは、超硬合金製金型の内面研削で曲線部分のズレを手動プログラムで補正しており、1回60分かかっていました。穴の半径・深さ・角度を入力すれば自動で加工できるAIシステムを導入し、作成時間を10分に短縮しています。能登地域で確認できる唯一のAI事例でもあります。

判定・予測系4社を、入力データと事例集記載の効果・目標で並べると次のようになります。

判定・予測系AI事例の入力データと効果(2018年度採択)
企業名熟練者の判断対象AIへの入力データ事例集記載の効果実績か目標か
有限会社かわにさつまいもの形の階級カメラ画像正答率85%実績(目標95%)
株式会社心結来店者数とシフト予約・レジ・手書きメモ・イベント情報予測誤差20%以内目標
ヴィスト株式会社管理職の適性電子化した人事情報とアンケート幹部8名を配置実績
株式会社エイ・エム・シィ加工プログラムの補正穴の半径・深さ・角度60分から10分へ短縮実績
※効果は事例集記載時点の数値です。目標値と実績値を区別して読んでください。

表から読み取れるのは、AIへの入力が「既に数値や画像として取れるもの」に限られていることです。熟練者の頭の中にしかない判断基準をそのまま学習させた事例は、4社の中にありません。

出典:石川県商工労働部産業政策課『AI・IoT導入支援事例集<H30年度AI・IoTを活用した業務効率化・省力化支援事業採択事例>』(公開日記載なし)(2026年9月6日確認)

自社へ応用するときは「データ・反復量・運用担当」の3点を確認する

県事例集と新しい事例を自社へ置き換えるときは、「AIを使った会社と同じ業種か」より、データの状態、作業の反復量、導入後に見直す担当者の3点を確認すると整理しやすくなります。これは県が定めた採択基準ではなく、本記事で事例を比較するための編集上の整理です。

データ集約・繰り返し量・担当者の3条件でAI事例の再現可否を判定する流れのチェック図

条件1:AIへ渡すデータを集められる

事例集の課題欄には、情報が散らばっている状態を出発点とした記述が繰り返し現れます。

情報の集約を先に行った事例

  • 株式会社心結:予約データ・レジデータ・手書きメモがバラバラだった
  • ヴィスト株式会社:人事情報が紙で保存され活用できていなかった
  • 大京株式会社:不具合情報を手書きとPCで二重管理していた

紙・口頭・個人メモに情報が散らばっている場合でもAI導入は検討できますが、読み取り・入力・統合の工程が追加で必要になります。最初に、現在のデータがどこにあり、どの形式ならAIへ渡せるかを確認してください。

条件2:繰り返し量と削減できる時間を測れる

いしぐろ造形工房の納品処理や森八の計量作業のように、導入前の作業量が分かると、導入後の効果を比較できます。発生頻度が低い業務でも、1回の負担やリスクが大きければ対象になる場合があります。回数だけで決めず、「年間で何時間・何件を減らせるか」を確認しましょう。

条件3:導入後の確認・改善を担当する人を決められる

AIや自動化の導入後には、誤りの確認、ルール変更、対象データの更新などが発生します。専任のAI担当者である必要はありませんが、誰が利用状況を確認し、問題が出たときに見直すのかを決めておくと運用が止まりにくくなります。

3条件を自社に当てはめるための確認項目を用意しました。

再現可否の自己診断

  • 対象業務のデータが紙や口頭ではなくファイルやシステムに残っている
  • 複数のシステムや帳票に散らばった情報を1か所にまとめられる
  • 対象業務の発生件数・処理時間を記録できる
  • 導入前の処理時間や件数を今すぐ数値で言える
  • 導入後に精度やルールを見直す担当者を決められる

おすすめの方

  • 対象業務のデータを集められる
  • 現在の処理時間や件数を測れる
  • 導入後に確認・改善する担当者を決められる

合わない方

  • 何を改善したいか決まっていない
  • 導入前の作業量を把握していない
  • 導入後の確認責任者が決まっていない

IoT・RFIDの見える化はAIではないが、AI導入の前段階になる

県事例集の残り10社は何をしたのか、AIではないなら読む価値がないのか、と疑問に思うかもしれません。10社の取り組みはセンサー・RFID・バーコード・IoT計量器によるデータ収集と見える化で、判断や予測をAIに委ねてはいません。しかし、AI5社が最初に行った「情報の集約」を設備側で実現した事例として、AI導入の前段階に位置づけられます。

用語の違いを先に整理します。

AI(人工知能)
画像・数値・文章などのデータから、判定・予測・認識・生成を行う技術。県事例集では画像判定・来店予測・人事分析・AI-OCRが該当します。
IoT
センサーや機器をネットワークにつなぎ、稼働状況や数量などのデータを自動で収集する仕組み。判断は人が行います。
RPA
パソコン上の定型操作をソフトウェアで自動化する技術。AI-OCRと組み合わせると紙の処理まで自動化できます。
RFID
無線ICタグを読み取って物の位置や状態を記録する技術。検品や出荷確認の省力化に使われます。

稼働見える化・RFID・IoT計量の3グループ

10社は用途で3グループに分かれます。設備の稼働見える化は、浅野繊維工業(かほく市)・梶製作所(かほく市)・小松電業所(小松市)・高山リード(中能登町)・北菱(小松市)の5社です。いずれもセンサーや電気信号から稼働状況を収集しています。浅野繊維工業はボビン巻作業のロス時間を年600時間の5分の1に減らし、夜間運転で小ロット品の生産能力を1.5倍に高めました。北菱は稼働情報の収集時間を年86時間削減し、設備稼働率を8.8%向上させています。

RFID・バーコードによる検品と監視は、大日製作所(野々市市)・宮本製作所(宝達志水町)・ヨシオ工業(白山市)・大京(小松市)の4社です。大日製作所は電着塗装の不良監視に耐熱RFIDを使い、従業員による監視作業を月40時間からゼロにしました。森八(金沢市)はIoT計量器でバーコードを読み取り、配合ミスを警告する仕組みにより、計量時間を年442時間から221時間へ半減させています。

見える化で集めたデータがAIの入力になる

梶製作所の事例は、この位置づけを端的に示しています。センサーで稼働・停止は把握できていたものの停止理由が分からず、タッチパネルで「準備作業による停止」「機械故障による停止」と要因を入力できる仕組みを追加しました。要因付きの停止データが蓄積されれば、次の段階で停止の予測や原因の自動分類にAIを使う土台ができます。

出典:石川県商工労働部産業政策課『AI・IoT導入支援事例集<H30年度AI・IoTを活用した業務効率化・省力化支援事業採択事例>』(公開日記載なし)(2026年9月6日確認)

県内事例をそのままコピーせず、前提条件まで確認する

同じツールを導入しても、対象業務、データ、運用体制が違えば同じ結果になるとは限りません。県内事例を参考にするときは、導入した技術だけでなく、事前準備と測定方法まで確認してください。

補助金・伴走支援が前提だった事例を自力で再現しようとする

事例集の15社は、いずれも県の支援事業の採択企業です。採択には申請テーマ・課題・効果目標の整理が求められ、導入の設計段階から外部の目が入っています。同じ機器を自費で購入しても、課題の定義と効果目標を飛ばせば、何を測って成功と呼ぶのかが定まりません。補助事業を使うかどうかにかかわらず、申請書に書く程度の「課題・取り組み・目標数値」を先に文書化することが、事例の再現には欠かせません。

生成AIに顧客情報や機密をそのまま入力する

加賀市のChatGPT導入が運用マニュアルとガイドラインの整備を伴っていたように、生成AIの業務利用では「何を入力してよいか」の線引きが先に必要です。顧客名簿や未公開の図面、取引条件をそのまま外部のAIサービスに入力すると、個人情報保護や取引先との秘密保持契約に抵触するおそれがあります。

導入前の数値を取らずに始める

県事例集には、導入前後の実績値がある事例と、導入後の目標値を示している事例が混在しています。いずれの場合も、導入前の処理時間・件数・精度などを記録しておけば、導入後に効果を比較しやすくなります。

県内事例をひな形にする場合の利点と注意点を両面で整理します。

県内事例を参考にする利点

  • 企業名と効果数値が公開された一次情報で社内説明に使える
  • 業種・所在地が近く、経営者に具体像を示しやすい
  • 課題から効果までの型が統一され、申請書の雛形になる

そのまま真似るときの注意点

  • 企業事例は2018年度採択で、使用技術は当時のもの
  • 補助事業の採択企業であり、自費導入と前提が異なる
  • 導入後の継続状況や現在の数値は公開されていない

相談先は「データ整備」と「AI実装」の段階で使い分ける

自社の現在地が分かったあと、どこに相談すればよいかは段階によって変わります。データがまだ集まっていない段階と、集まったデータにAIを適用する段階では、向いている相談先が異なります。

データ整備の段階と実装の段階で公的支援と石川県内事業者を使い分ける相談先の対応図

データ整備段階:自治体・県の支援と公的相談窓口

データ整備の段階では、計画策定を支援する公的制度も確認できます。金沢市は「AI・DX推進支援事業補助金」を設けています。1年目にAI・DX推進計画の策定を支援し、2年目は計画に基づくシステム導入費の2分の1(小規模企業者は3分の2)を上限200万円まで補助する2段階の仕組みです。市のページによると採択は審査会でのプレゼンテーションを経て決まります。石川県の旧「AI・IoT・RPAを活用した業務効率化・省力化支援事業」は2018〜2020年度の公募記録を確認できます。現在利用できる県・市の制度は、申請時点の公式公募情報を確認してください。

補助金の申請手続きに不安がある場合は、石川の補助金申請代行・相談先の選び方で依頼先の比較と費用の考え方を解説しています。

出典:金沢市『金沢市AI・DX推進支援事業補助金』(公開日記載なし)(2026年9月6日確認)
出典:石川県『令和2年度AI・IoT・RPAを活用した業務効率化・省力化支援事業について』(公開日記載なし)(2026年9月6日確認)

実装段階:県内事業者へ外注する判断基準

データが集まり、対象業務と目標数値が決まった段階では、AI開発や業務自動化を手がける県内事業者への外注が選択肢に入ります。外注の判断基準は、社内に条件3の担当者を置けるかどうかです。社内で運用を担える場合は、外注先へ設計・初期構築を依頼し、その後の改善を社内で進める分担もできます。社内で保守・評価を行いにくい場合は、運用支援を含む契約も比較してください。

段階ごとの相談先と、判断の目安を表にまとめます。

AI導入の段階別の相談先と判断の目安
段階自社の状態主な相談先判断の目安
データ整備情報が紙や個人メモに散在自治体の計画策定支援・商工会議所補助制度の計画策定枠を優先
対象選定データはあるが何に使うか未定公的相談窓口・県内事業者の無料相談導入前数値の記録から着手
AI実装対象業務と目標数値が決定AI開発・業務自動化の県内事業者社内担当者の有無で契約形態を選ぶ
運用改善導入済みで精度や手順を見直したい導入先事業者・社内担当者業務に合う見直し頻度を決める
※判断列は自社の状況に合わせて上書きしてお使いください。

表は、県内事例から読み取れる進め方を整理した編集上の目安です。既存SaaSで課題を解決できる場合など、データ整備と実装を別工程に分ける必要がないケースもあります。

外注先の候補となる県内の開発会社は、石川県のAI導入支援・開発会社の比較と自社の状況別の選び方で紹介しています。

外注が向かないケース

外注先に相談する前に、外注が向かないケースを確認しておくと、費用を無駄にせずに済みます。データが紙中心でも、AI-OCRや入力設計から外注する方法はあります。ただし、開発前にデータ化の費用と手間も見積もる必要があります。発生頻度が低い業務も、1件あたりの負担やリスクが大きければ自動化候補になり得ます。対象業務がまだ決まっていない場合は、開発見積もりより先に業務の棚卸しや相談から始めると進めやすくなります。

業務自動化・システム開発の相談をしてみる※データ整備の段階からでも、現状を伺ったうえで進め方をご提案します

石川県のAI活用事例に関するよくある質問

事例を読んだあとに残りやすい疑問を、一次情報で答えられる範囲でまとめました。

A. 県の事例集に投資額の記載はありません。支援事業の補助上限や補助率は年度ごとの公募要項に記載されるため、県の公式ページで該当年度の要項を確認してください。

石川県のAI活用事例は「入力・処理・測定」に分けて自社へ置き換える

2018年度の事例と2025〜2026年の生成AI事例では使っている技術が違いますが、比較するときの見方は共通しています。「何を入力したか」「AIやシステムが何を処理したか」「結果を何で測ったか」に分ければ、業種が違っても自社へ置き換えやすくなります。

本記事の要点

  • 県事例集15社のうちAIを使ったのは5社で、残り10社はIoT・RFIDによる見える化
  • 本記事で扱った自治体事例は、金沢市のAIチャットボットと加賀市の庁内ChatGPT導入
  • 県事例には、紙・予約・人事・画像などAIへ渡す情報を整理してから適用した事例がある
  • 自社へ応用するときはデータ・反復量・運用担当の3点を確認する
  • 導入前の数値記録と生成AIの入力ルールは、着手前に文書化する

次の行動として、対象業務を1つ選び、入力データの所在と現在の処理時間・件数を確認してください。そこまで分かれば、既存ツールで試すか、県内事業者へ相談するかを比較しやすくなります。補助制度を使う場合は、契約前に最新の公募状況と対象経費を公式ページで確認してください。

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