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石川県のAI活用事例|県内企業・自治体の導入例から分かる再現条件

更新日2026.08.25
確認時点2026年8月時点
調査数県内15社+自治体2件

「AIで何かできないか」と経営者に言われたものの、社内に前例がなく、県内の事例を探しても古い情報と全国向けの一般論しか見つからない。石川県の中小企業でAI導入の検討を任された方から、そうした声を聞くことが増えました。実は石川県には、企業名と効果数値まで公開された一次情報の事例集が存在します。ただし、その事例集に載る15社のうち、AIを使ったと言える取り組みは5社にとどまり、残りはIoTやRFIDによるデータ収集です。石川県のAI活用事例は「AIとIoTを切り分けて読む」ことで初めて、自社で再現できるかどうかの判断材料になります。判断の軸は業種ではなく、入力データが既にデジタルで揃っているかどうかにあります。県の事例集と自治体の公式発表という一次情報だけを根拠に、用途別の事例と再現条件を読み解くと、2018年度の事例からでも自社に当てはめられる型が見えてきます。

この記事でわかること

  • 企業名と効果数値まで公開された県内AI事例7件(企業5社・自治体2件)の内容と年次
  • 文書処理・判定予測の2系統に分けた再現条件と、各事例の入力データ
  • IoT・RFIDの見える化事例がAIではない理由と、AI導入の前段階になる位置づけ
  • 自社で再現できるかを判定する3条件と、真似ると失敗する条件

事例を読む前に、多くの方が抱く疑問と短い答えを先にまとめます。

石川県のAI活用事例に関する疑問と短い答え
疑問短い答え
企業名と数値まで公開の事例はあるか県の事例集の企業5社と、金沢市・加賀市の公式発表2件が確認できます
事例集の15社はすべてAIかAIは5社、残り10社はIoT・RFIDによるデータ収集です
事例はいつのものか企業事例は2018年度採択、自治体事例は2019年以降です
自社でも再現できるか業種より入力データがデジタルで揃っているかで決まります
投資額は公開されているか事例集に投資額の記載はありません
※答えの根拠と条件は本文の各章で解説しています。

早見表の答えがなぜそうなるのかを、事例の一次情報に沿って順に確認します。

石川県のAI活用事例は企業名と数値まで公開された7件から読み解く

県内の事例を探すと、まとめサイトの匿名事例と古い資料が混在していて、どれを信じてよいか迷うのではないでしょうか。本記事では、企業名・所在地・効果数値まで1件ごとに公開された資料に絞り、県の事例集に載る企業5社と、金沢市・加賀市の公式発表2件の計7件を読み解きます。県内には加賀市のドローン配送実証をはじめAIに関わる実証や導入の発表がほかにもあり、県の支援事業も令和2年度以降続いています。編集部がこの7件に絞る理由は、課題・取り組み・効果の数値が1件ごとに揃っており、自社との比較材料に使える公開資料がこの範囲だからです。中心となる「AI・IoT導入支援事例集」は、2018年度(平成30年度)の「AI・IoTを活用した業務効率化・省力化支援事業」の採択事例を、15社分1社1ページでまとめたものです。

ここで注意したいのは、事例集の名称に「AI」とあっても、15社全部がAIを使ったわけではない点です。本文を読むと、AIによる判定・予測・認識を含む取り組みは5社で、残る10社はセンサー・RFID・バーコードによるデータ収集と見える化にあたります。両者を混ぜて「石川県のAI事例15社」と読むと、自社の再現判断を誤ります。

石川県の支援事業採択15社をAI該当5社とIoT10社に分け用途別に配置した分類図

県の支援事業で採択された15社のうちAIを使ったのは5社

AIを使った5社は、用途で見ると文書処理が1社、判定・予測・分析が4社に分かれます。各社の所在地と用途を、事例集の記載に沿って一覧にします。

石川県AI・IoT導入支援事例集のうちAIを使った5社(2018年度採択)
企業名所在地業種AIの用途事例集記載の効果採択年度
有限会社いしぐろ造形工房小松市建築用金属製品製造発注書のAI-OCR読み取りとRPA連携納品処理時間を30%削減2018年度
ヴィスト株式会社金沢市障害者向け就労支援人事データの適性分析新拠点の幹部8名を配置2018年度
株式会社エイ・エム・シィ志賀町超硬合金製金型製造加工プログラムのズレ自動補正作成時間60分から10分へ短縮2018年度
有限会社かわに金沢市五郎島金時の生産画像認識による形状判定正答率85%(目標95%)2018年度
株式会社心結金沢市着物レンタル来店者数の予測予測誤差20%以内が目標2018年度
※効果の数値は事例集記載時点のものです。現在の稼働状況は公開されていません。

5社に共通するのは、AIの前に「バラバラだった情報を1か所に集める」工程を踏んでいることです。心結は予約データ・レジデータ・手書きメモの統合から、ヴィストは紙の人事情報のデータベース化から着手しています。この順序が、後述する再現条件の土台になります。

出典:石川県商工労働部産業政策課『AI・IoT導入支援事例集<H30年度AI・IoTを活用した業務効率化・省力化支援事業採択事例>』(公開日記載なし)(2026年8月22日確認)

自治体はチャットボットと庁内ChatGPTの2例

本記事が自治体側で扱うのは、金沢市と加賀市の公式ページで詳細を確認できる2件です。金沢市は「AI活用行政情報自動案内システム」を運用しています。行政サービスの手続きや制度に関する質問へAIチャットボット「しつぎおとうふくん」が会話形式で答え、パソコンやスマートフォンから24時間利用できます。市のページに運用開始日の記載はありません。

加賀市は2023年5月30日付のプレスリリースで、市役所業務におけるChatGPTの運用開始を公表しました。県内自治体の庁内利用としては早い部類に入り、文書作成や企画のサポートを想定した導入です。なお、金沢市が庁内向けの生成AI基盤を導入したとする情報も二次サイトに見られますが、市の公式ページで確認できなかったため、ここでは載せない判断をしています。

出典:金沢市『AI活用行政情報自動案内システム(AIチャットボット)』(公開日記載なし)(2026年8月22日確認)
出典:加賀市『【プレスリリース】市役所業務におけるChatGPT の運用を開始します』(2023年5月30日公開)(2026年8月22日確認)

文書・問い合わせ業務のAIは「紙と定型の繰り返し」があれば再現しやすい

製造現場のない事務系の会社でも、県内事例は参考になるのでしょうか。文書処理と問い合わせ対応の事例は、業種を問わず「紙や定型文の繰り返し」がある会社なら再現の余地があります。県事例集のいしぐろ造形工房、金沢市のチャットボット、加賀市のChatGPT導入がこの系統にあたります。

いしぐろ造形工房:発注書のAI-OCRで納品処理を3割短縮(2018年度)

小松市で建築用金属製品を製造するいしぐろ造形工房は、ベテラン社員の経験に頼る事務作業が多く、産休などで代替要員を置いても引き継ぎが難しいという課題を抱えていました。取り組みとして、発注書(図面)の一部をAI-OCRで読み取り、RPAと組み合わせて納品処理業務の一部を自動化しています。事例集によると、納品処理にかかる時間は1日3時間45分から約2時間45分へ、30%の削減を達成しました。

この事例の入力データは「発注書という定型の紙」です。AIが読むのは図面の決まった位置にある文字情報であり、RPAがその後の転記を担います。つまり、毎日同じ書式の書類を同じ手順で処理している業務があれば、製造業でなくても同じ構造を当てはめられます。

紙の発注書や問い合わせをAI-OCRや生成AIで処理する事務業務のデータの流れ図

金沢市・加賀市:問い合わせ応答と文書作成に生成AIを適用

金沢市のチャットボットは、市民からの手続きや制度に関する質問に24時間答える仕組みです。問い合わせの大半が「よくある質問」の範囲に収まる業務で、回答の元になる情報が既に整理されていることが前提になります。中小企業に置き換えると、営業時間・料金・申込方法といった定型の問い合わせが多い業種ほど、同じ構造を再現しやすいと言えます。

加賀市のChatGPT導入は、職員の文書作成や企画の下書きを支援する使い方です。チャットボットが「外部からの質問に答える」用途であるのに対し、ChatGPT導入は「内部の文書を作る」用途にあたります。市の発表が運用マニュアルとガイドラインの整備を前提としている点は、企業が生成AIを業務に入れる際にも同じ順序が求められることを示しています。

文書・問い合わせ系のAIを導入する場合、県内事例から読み取れる順序は次のとおりです。

1

定型業務を1つ選ぶ

所要1週間目安

毎日・毎週繰り返す書類処理や問い合わせを1種類だけ選びます。

2

入力と出力を固定する

所要1週間目安

AIに渡す情報の書式と、受け取る結果の形を決めます。

3

利用ルールを文書化する

所要1〜2週間目安

入力してよい情報と禁止する情報を社内ルールとして明文化します。

4

導入前の時間を計測する

所要1週間目安

現在の処理時間を記録し、比較できる状態にします。

判定・予測のAIは「人の目と勘でやっている作業」をデータ化できるかで決まる

現場の熟練者が目と勘で判断している作業をAIに置き換えられるか、という問いは製造業・農業・サービス業に共通します。県事例集でAIを使った5社のうち4社がこの系統で、いずれも「熟練者の判断に使っている情報を、カメラや予約データや人事データに置き換える」ところから始めています。

画像・予約・人事の各データを入力として判定や予測を行う石川県内事例の入出力対応図

画像判定:かわにの等級選別(2018年度)

金沢市粟崎町で五郎島金時を生産する有限会社かわにでは、重さ8通りの等級は計量で判別できる一方、形6通りの階級は経験豊富な熟練者しか判別できず、長時間の選別作業に拘束されていました。取り組みは、さつまいもをカメラで撮影し、AIの画像認識で形状を自動判別するものです。事例集の記載時点で正答率は85%、目標は熟練者と同等以上の95%とされています。

この事例で注目したいのは、目標値と実績値が分けて書かれている点です。85%という数値は「誰でも選別できる体制」には届いていない段階の記録であり、導入すれば即座に熟練者を置き換えられるわけではないことを示しています。

需要予測:心結の来店者数予測(2018年度)

金沢市本町で着物レンタルを営む株式会社心結は、経験と勘で来店者数を予測してスタッフを手配していたため、人員の不足や余剰が頻発していました。取り組みでは、まずWeb予約・レジの来店実績・飛び込み客の手書きメモを1つのシステムに集約し、そこに観光イベントの有無などを加えてAIが来店者数を予測します。目標は予測誤差20%以内です。

入力データの集約が先、AIが後という順序がはっきり表れた事例です。観光客の多い金沢の中心部で、週末やイベント日に需要が跳ねる業態にとって、予測の対象は「勘で決めていたシフト」であり、AIはその判断材料を数値に置き換える役割を担います。

データ分析:ヴィストの人材配置・エイ・エム・シィの加工補正(2018年度)

金沢市広岡のヴィスト株式会社は、障害者向け就労支援の新拠点を急速に増やす中で、紙の人事情報から資格を優先して管理職を選んでおり、経験や適性を生かした配置ができていませんでした。人事管理システムを導入して従業員アンケートを電子化し、経験や適性をAIが分析する仕組みに切り替えた結果、新拠点の拠点長3名・責任者3名・次期拠点長2名の配置に使われています。

志賀町の株式会社エイ・エム・シィは、超硬合金製金型の内面研削で曲線部分のズレを手動プログラムで補正しており、1回60分かかっていました。穴の半径・深さ・角度を入力すれば自動で加工できるAIシステムを導入し、作成時間を10分に短縮しています。能登地域で確認できる唯一のAI事例でもあります。

判定・予測系4社を、入力データと効果で並べると次のようになります。

判定・予測系AI事例の入力データと効果(2018年度採択)
企業名熟練者の判断対象AIへの入力データ事例集記載の効果実績か目標か
有限会社かわにさつまいもの形の階級カメラ画像正答率85%実績(目標95%)
株式会社心結来店者数とシフト予約・レジ・手書きメモ・イベント情報予測誤差20%以内目標
ヴィスト株式会社管理職の適性電子化した人事情報とアンケート幹部8名を配置実績
株式会社エイ・エム・シィ加工プログラムの補正穴の半径・深さ・角度60分から10分へ短縮実績
※効果は事例集記載時点の数値です。目標値と実績値を区別して読んでください。

表から読み取れるのは、AIへの入力が「既に数値や画像として取れるもの」に限られていることです。熟練者の頭の中にしかない判断基準をそのまま学習させた事例は、4社の中にありません。

出典:石川県商工労働部産業政策課『AI・IoT導入支援事例集<H30年度AI・IoTを活用した業務効率化・省力化支援事業採択事例>』(公開日記載なし)(2026年8月22日確認)

自社で再現できるかは「データ集約・繰り返し量・担当者」の3条件で判定する

事例を読み終えたあと、自社に当てはまるのかを判断する基準がほしいと感じる方は多いはずです。県事例集15社の「申請時の課題」欄を横断して読むと、共通する出発点が3つに集約されます。この3条件は事例集の記載から編集部が抽出した解釈であり、県が定めた基準ではない点をお断りしておきます。

データ集約・繰り返し量・担当者の3条件でAI事例の再現可否を判定する流れのチェック図

条件1:予約・レジ・手書きメモが1か所に集まっている

事例集の課題欄には、情報が散らばっている状態を出発点とした記述が繰り返し現れます。

情報の集約を先に行った事例

  • 株式会社心結:予約データ・レジデータ・手書きメモがバラバラだった
  • ヴィスト株式会社:人事情報が紙で保存され活用できていなかった
  • 大京株式会社:不具合情報を手書きとPCで二重管理していた

3社とも、AIや見える化の前に情報を1か所へ集める工程を踏んでいます。自社の業務データが紙・口頭・個人のメモに散らばっている段階では、AIに渡す入力そのものが存在しません。集約が済んでいるかどうかが、最初の分かれ目です。

条件2:同じ判断・入力を週単位で繰り返している

いしぐろ造形工房の納品処理は毎日3時間45分、森八の計量作業は年間442時間というように、効果が数値で出た事例はいずれも反復回数の多い業務を対象にしています。月に数回しか発生しない業務では、AIやRPAを組んでも削減時間が小さく、導入の手間に見合いません。週単位で繰り返す作業を候補にするのが、県内事例に沿った選び方です。

条件3:社内にAI担当を1名決められる

15社の課題欄には「属人化」「ベテラン頼み」という言葉が繰り返し現れます。導入後に入力ルールの更新や精度の確認を行う担当者がいなければ、かわにの事例のように正答率を85%から95%へ上げていく工程が止まります。専任である必要はありませんが、名前の付いた担当者を置けるかどうかは、事例を再現できるかを左右します。

3条件を自社に当てはめるための確認項目を用意しました。

再現可否の自己診断

  • 対象業務のデータが紙や口頭ではなくファイルやシステムに残っている
  • 複数のシステムや帳票に散らばった情報を1か所にまとめられる
  • 同じ判断や入力が週に複数回発生している
  • 導入前の処理時間や件数を今すぐ数値で言える
  • 導入後に精度やルールを見直す担当者を1名決められる

おすすめの方

  • 紙の帳票や定型の問い合わせが毎日発生している事業者
  • 予約・レジ・顧客情報を既にシステムで管理している事業者
  • 熟練者の判断を画像や数値で取れる工程がある製造業・農業

合わない方

  • 対象業務のデータが紙や個人のメモにしかない事業者
  • 月数回しか発生しない業務を自動化したい事業者
  • 導入後に見直す担当者を置けない事業者

IoT・RFIDの見える化はAIではないが、AI導入の前段階になる

県事例集の残り10社は何をしたのか、AIではないなら読む価値がないのか、と疑問に思うかもしれません。10社の取り組みはセンサー・RFID・バーコード・IoT計量器によるデータ収集と見える化で、判断や予測をAIに委ねてはいません。しかし、AI5社が最初に行った「情報の集約」を設備側で実現した事例として、AI導入の前段階に位置づけられます。

用語の違いを先に整理します。

AI(人工知能)
画像・数値・文章などのデータから、判定・予測・認識・生成を行う技術。県事例集では画像判定・来店予測・人事分析・AI-OCRが該当します。
IoT
センサーや機器をネットワークにつなぎ、稼働状況や数量などのデータを自動で収集する仕組み。判断は人が行います。
RPA
パソコン上の定型操作をソフトウェアで自動化する技術。AI-OCRと組み合わせると紙の処理まで自動化できます。
RFID
無線ICタグを読み取って物の位置や状態を記録する技術。検品や出荷確認の省力化に使われます。

稼働見える化・RFID・IoT計量の3グループ

10社は用途で3グループに分かれます。設備の稼働見える化は、浅野繊維工業(かほく市)・梶製作所(かほく市)・小松電業所(小松市)・高山リード(中能登町)・北菱(小松市)の5社です。いずれもセンサーや電気信号から稼働状況を収集しています。浅野繊維工業はボビン巻作業のロス時間を年600時間の5分の1に減らし、夜間運転で小ロット品の生産能力を1.5倍に高めました。北菱は稼働情報の収集時間を年86時間削減し、設備稼働率を8.8%向上させています。

RFID・バーコードによる検品と監視は、大日製作所(野々市市)・宮本製作所(宝達志水町)・ヨシオ工業(白山市)・大京(小松市)の4社です。大日製作所は電着塗装の不良監視に耐熱RFIDを使い、従業員による監視作業を月40時間からゼロにしました。森八(金沢市)はIoT計量器でバーコードを読み取り、配合ミスを警告する仕組みにより、計量時間を年442時間から221時間へ半減させています。

見える化で集めたデータがAIの入力になる

梶製作所の事例は、この位置づけを端的に示しています。センサーで稼働・停止は把握できていたものの停止理由が分からず、タッチパネルで「準備作業による停止」「機械故障による停止」と要因を入力できる仕組みを追加しました。要因付きの停止データが蓄積されれば、次の段階で停止の予測や原因の自動分類にAIを使う土台ができます。

出典:石川県商工労働部産業政策課『AI・IoT導入支援事例集<H30年度AI・IoTを活用した業務効率化・省力化支援事業採択事例>』(公開日記載なし)(2026年8月22日確認)

事例をそのまま真似ると失敗する条件がある

うまくいった事例だけを見て同じ道具を入れれば成功する、と考えたくなるのは自然なことです。しかし県内事例には、そのまま真似ると結果が出にくい前提条件が3つ含まれています。ここでは他社の取り組みを評価するのではなく、読者が見落としやすい条件を一般化して整理します。

補助金・伴走支援が前提だった事例を自力で再現しようとする

事例集の15社は、いずれも県の支援事業の採択企業です。採択には申請テーマ・課題・効果目標の整理が求められ、導入の設計段階から外部の目が入っています。同じ機器を自費で購入しても、課題の定義と効果目標を飛ばせば、何を測って成功と呼ぶのかが定まりません。補助事業を使うかどうかにかかわらず、申請書に書く程度の「課題・取り組み・目標数値」を先に文書化することが、事例の再現には欠かせません。

生成AIに顧客情報や機密をそのまま入力する

加賀市のChatGPT導入が運用マニュアルとガイドラインの整備を伴っていたように、生成AIの業務利用では「何を入力してよいか」の線引きが先に必要です。顧客名簿や未公開の図面、取引条件をそのまま外部のAIサービスに入力すると、個人情報保護や取引先との秘密保持契約に抵触するおそれがあります。

導入前の数値を取らずに始める

事例集の15社すべてが「導入前3時間45分、導入後約2時間45分」のように、導入前と導入後の数値を持っています。現在の処理時間や件数を記録しないまま始めると、効果が出ているのかを社内で説明できず、継続の判断ができなくなります。

県内事例をひな形にする場合の利点と注意点を両面で整理します。

県内事例を参考にする利点

  • 企業名と効果数値が公開された一次情報で社内説明に使える
  • 業種・所在地が近く、経営者に具体像を示しやすい
  • 課題から効果までの型が統一され、申請書の雛形になる

そのまま真似るときの注意点

  • 企業事例は2018年度採択で、使用技術は当時のもの
  • 補助事業の採択企業であり、自費導入と前提が異なる
  • 導入後の継続状況や現在の数値は公開されていない

相談先は「データ整備」と「AI実装」の段階で使い分ける

自社の現在地が分かったあと、どこに相談すればよいかは段階によって変わります。データがまだ集まっていない段階と、集まったデータにAIを適用する段階では、向いている相談先が異なります。

データ整備の段階と実装の段階で公的支援と石川県内事業者を使い分ける相談先の対応図

データ整備段階:自治体・県の支援と公的相談窓口

データ整備の段階では、計画策定から支援する公的制度が候補になります。金沢市は「AI・DX推進支援事業補助金」を設けています。1年目にAI・DX推進計画の策定を支援し、2年目は計画に基づくシステム導入費の2分の1(小規模企業者は3分の2)を上限200万円まで補助する2段階の仕組みです。市のページによると採択は審査会でのプレゼンテーションを経て決まります。県の支援事業は2018年度・2019年度・2020年度に公募が確認できますが、2026年度の実施有無は県の公式ページで確認してください。

補助金の申請手続きに不安がある場合は、石川の補助金申請代行・相談先の選び方で依頼先の比較と費用の考え方を解説しています。

出典:金沢市『金沢市AI・DX推進支援事業補助金』(公開日記載なし)(2026年8月22日確認)
出典:石川県『令和2年度AI・IoT・RPAを活用した業務効率化・省力化支援事業について』(公開日記載なし)(2026年8月22日確認)

実装段階:県内事業者へ外注する判断基準

データが集まり、対象業務と目標数値が決まった段階では、AI開発や業務自動化を手がける県内事業者への外注が選択肢に入ります。外注の判断基準は、社内に条件3の担当者を置けるかどうかです。担当者がいれば、外注先には設計と初期構築を依頼し、運用と見直しを社内で回す分担が成り立ちます。担当者を置けない場合は、運用まで含めた伴走型の契約でなければ、導入後に止まる可能性が高くなります。

段階ごとの相談先と、判断の目安を表にまとめます。

AI導入の段階別の相談先と判断の目安
段階自社の状態主な相談先判断の目安
データ整備情報が紙や個人メモに散在自治体の計画策定支援・商工会議所補助制度の計画策定枠を優先
対象選定データはあるが何に使うか未定公的相談窓口・県内事業者の無料相談導入前数値の記録から着手
AI実装対象業務と目標数値が決定AI開発・業務自動化の県内事業者社内担当者の有無で契約形態を選ぶ
運用改善導入済みで精度や手順を見直したい導入先事業者・社内担当者見直し頻度を月1回で固定
※判断列は自社の状況に合わせて上書きしてお使いください。

表の判断列は、県内事例で効果が出た順序をなぞったものです。実装段階を飛ばして先にツールを契約する進め方は、事例集の15社には見られません。

外注先の候補となる県内の開発会社は、石川県のAI導入支援・開発会社の比較と自社の状況別の選び方で紹介しています。

外注が向かないケース

外注先に相談する前に、外注が向かないケースを確認しておくと、費用を無駄にせずに済みます。対象業務のデータがまだ紙にしかない場合、外注先ができるのは「まずデータを集めてください」という助言にとどまり、開発費をかける段階ではありません。月に数回しか発生しない業務も、自動化の効果が小さく、外注費を回収できない可能性があります。経営者が「AIで何かやれ」と言っているだけで対象業務が決まっていない場合も、外注の前に社内で条件1と条件2の棚卸しを済ませる方が、結果として早く進みます。

業務自動化・システム開発の相談をしてみる※データ整備の段階からでも、現状を伺ったうえで進め方をご提案します

石川県のAI活用事例に関するよくある質問

事例を読んだあとに残りやすい疑問を、一次情報で答えられる範囲でまとめました。

A. 県の事例集に投資額の記載はありません。支援事業の補助上限や補助率は年度ごとの公募要項に記載されるため、県の公式ページで該当年度の要項を確認してください。

石川県のAI活用事例は「入力データの有無」で読み替えると自社の判断材料になる

県内の事例を集めて読んでも、自社に当てはまる気がしないという感覚は、事例が2018年度のものであることや、業種が違うことから来ているのではないでしょうか。ここまで整理したとおり、本記事で扱った7件は、いずれも「入力データを先に揃え、繰り返しの多い業務にAIを当てる」という共通の型を持っています。業種や年次を剥がして型だけを取り出せば、判断材料として現在でも使えます。

本記事の要点

  • 県事例集15社のうちAIを使ったのは5社で、残り10社はIoT・RFIDによる見える化
  • 本記事で扱った自治体事例は、金沢市のAIチャットボットと加賀市の庁内ChatGPT導入
  • AI5社は全社が「情報の集約」を先に行い、入力データが揃ってからAIを適用した
  • 再現可否は「データ集約・繰り返し量・担当者」の3条件で判定する
  • 導入前の数値記録と生成AIの入力ルールは、着手前に文書化する

次の行動としては、自己診断の5項目を社内で確認し、条件1と条件2を満たす業務を1つだけ選ぶところから始めてください。その業務の現在の処理時間を1か月記録すれば、補助制度への申請にも県内事業者への相談にも使える材料が揃います。金沢市の補助制度や県の支援事業を使う場合は、募集時期が年度ごとに変わるため、各公式ページで最新の公募状況を確認したうえで計画策定に進むことをおすすめします。

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